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文学・評論

土の記 上・下

高村 薫

新潮社 2016.11.25

図書館で借りたが、返却までに時間がなかったので急いで読んだ。もっと落ち着いて読むべき本だった。

風土に寄り添った農の営みや昔ながらのコミュニティ、主人公の植物状態(やがて亡くなる)の妻が秘かに慈しんでいたらしいエロスの世界、そして主人公の娘や孫が織りなす新しい意味での「異界」、それらが三つ巴になって稠密な物語の世界が展開する。この三つのうちどれを欠いても凡庸な環境小説や私小説になっていたかもしれないが、著者は違う三様の世界をやすやすと統合し、新しい平成のリアリズム文学を創造した、のだと思う。

必ずやじっくりと再読するつもり。

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