――プラトン・フッサールの〈共通了解をつくる方法
西研 筑摩選書 2019.10.15
とかく亀裂や分断が話題になる現代社会に、なぜ哲学が必要かを心底から納得させてくれる本。
「対話する哲学」として、著者は数ある哲学者のなかからプラトン(ソクラテス)とフッサールの思想を取り上げる。一見結びつかないように見える二人だが、共通了解に基づく対話という意味では非常に深い関わりがあることが、読んでみるとなるほどと腑に落ちる。
ソクラテス、プラトンのところも面白いが、フッサール現象学の解読はなかなか類をみない規模と深さに達していると思う。初学者の入門書としても、またかなりの程度勉強した人には先へ進むための手引きとしても役に立つだろう。私自身多少フッサールをかじったが、とにかく常人の理解を受け付けない彼の書き方だから道に迷うことしばしばである。
そこでこれからは、本書から要点の抜き書きメモをつくり、それを片手にまたフッサールに挑戦してみたい。
とりわけ本書では、フッサール哲学の業績(実際にやったこと)と、彼がやらなかったことや(多分やりたかったのだけれど)出来なかったことをはっきり区別して書いているので、現象学が万能の処方箋というような思い込みを避けることができる。後代の私たちがきちんと受け止めてかんがえなければらないことも多いのだ。
そんなことも含めて、最後の「正義」の本質看取は圧巻である。じわじわとあらゆる角度から正義の本質に迫る姿はスリリングであり、失礼ながらマイケル・サンデルの正義の話がshallowであると感じてしまった。