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まんが

ウチの母が宗教にハマりまして

藤野美奈子 [監修]島田裕巳

KKベストセラーズ 2013.11.28

深いのにオモシロイ、オモシロイのに深い!

新宗教を扱っているが、本書には、お金だけが目当てのオソロシイ大教団やその信者はそれほど登場しない。当たり前の日常のなかでよりよい暮らし、ささやかな幸せを求めて新宗教に「はまる」、言ってみればごくまっとうで人間的な人々が描かれていて、彼らに対する著者の眼差しはあたたかい。あの人たちがべつに異様で特別な人間じゃない、ただ一生懸命に生きているだけなのだと。

とはいえ、「はまる」人には一定の傾向があるような気もする。著者のお母さんの例にもあるように、異界からのメッセージを受け取ってしまう感性のスルドイ人はやっぱりそっちへ行きやすいのかも。私自身にはそういう傾向はまったくないが、関心は以前からあって、スピリチュアル系もふくめそんな本をずいぶん読んだときもあった。実は、超常体験のようなものは頭から否定してもらってすっきりしたいというのが本音だったが、結局のところ明確な肯定も否定もないというのが大方のところだ。世の中には一定そういう経験を持つ人がいるというのは否定できない事実のようだ。心理学、哲学、そして当時最先端の自然科学をベースにした医学をも修めたC.G.ユングにしたって、紛れもなく超常現象を語っている。

そういう感性を極端に強く持った人が霊能者になったり教祖になったりするのだろうか。そしてその能力(というか傾向)や信仰が、他人を、世界を支配する欲望に結びついたりする。著者の母上のエピソードが感動的なのは、信仰が、ひたすら家族の健康や幸せ以上を求めない純粋な動機に根ざしているからだと思う。「天上からのメッセージ」は実は地上に生きる等身大の人間のためにあり、その限りで新であろうと旧であろうと、宗教そのものは信ずる人にとっても周りの人にとっても「善きもの」なのだろう。笑いながら、ちょっと目頭を熱くしたりしながら、けっこう考えさせられました。