「幸福」と「自由」をいかに守るか
岩内章太郎 NHKブックス 2021.06.25
竹田青嗣氏・西研氏に始まるフッサール現象学の発展的継承は、ここに来て、少なくとも日本では見事な形で定着したとの感慨を持った。三章以降、フッサールの引用が随所に出てくるが、これを丁寧に読み、そして著者の解説を読めば、独我論とか形而上学的観念論とかいった批判がいかに的を外しているか明らかだ。これからはこの現象学的認識論なしには、もはや「普遍性」は語れないのではないか。
この認識論の確かな土台の上に、現象学的言語ゲームや善の原始契約といった斬新な理念を導入……哲学の未来は大丈夫!ちょっとおおげさだが、そんな思いを抱かせてくれる好著。