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文学・評論

精霊たちの家

イサベル・アジェンデ/木村榮一 訳

河出書房新社 池澤夏樹=個人編集世界文学全集 Ⅱ-07

不思議な能力を持つ少女クラーラから始まる、三代にわたる資産家の家族の物語。たしかにガルシア・マルケスの『百年の孤独』を思わせる部分もあるが、それよりはもう少し当たり前の人間の生き様と地続きであると感じられる。世代が下がるにつれて、強烈な生命力が少しずつ削がれていく感じが、トーマス・マンの『ブッデンブローク家の人々』を思い起こさせる部分もある。その代わり末裔のアルバは確かな存在感をもって現実と切り結ぶのだが。
映画も見た。小説の濃度には比ぶべくもないが、映画と言う限界のなかではよく出来ている作品だった。ジェレミー・アイアンズがかっこよかった。

ストーリーについては、裏表紙の紹介を拝借しておく。
「不思議な予知能力をもつ美少女クラーラは、緑の髪をなびかせて人魚のように美しい姉ローサが毒殺され、その屍が密かに解剖されるのを目の当たりにしてから誰とも口をきかなくなる。9年の沈黙の後、クラーラは姉の婚約者と結婚。精霊たちが見守る館で始まった一族の物語は、やがて身分ちがいの恋に引き裂かれるクラーラの娘ブランカ、恐怖政治下に生きる孫娘アルバへと引き継がれていく。アルバが血にまみれた不幸な時代を生きのびられたのは、祖母クラーラが残したノートのおかげだった…」(池澤夏樹個人編集世界文学全集 裏表紙より)

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