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人文・思想

現象学とは何か 

哲学と学問を刷新する

竹田青嗣・西研 編著  河出書房新社  2020.12.30

アカデミズムには受け入れられないと言われた竹田青嗣師氏の哲学だが、学問としてそれを受け継ぐ次世代が、各分野できちんと育っていると感じさせる見事なアンソロジー。
哲学本流の論文はともかくとして、教育学、社会学、医学、心理学の分野では、集積したデータを元に仮説を組み立てていく手法が今でも普通だと思うが、本書はそれとは違う(もちろんこれらの分野ではそうした実証的な研究も必要なのだが)。これらの学問の本質と意味を問うアプローチ、いわばメタ学の集積である。

ところでこの「本質」というのがなかなか分かりにくい概念で、唯一永遠の真理と捉えられがちだがそういうことではない。この点は西研氏の「本質観取をどのように行うか」がとても分かりやすく、ときどき「本質」について混乱したらこの論文に立ち戻ってみるといいと思う。

冒頭の竹田氏による「ヨーロッパ認識論におけるパラダイム変換」はもちろん竹田現象学のエッセンスが詰まった論文だが、殊更難解ではなく読みやすい。竹田現象学の到達点を知りたい人には是非お勧め。

ただ現象学とはどういうものなのか、手っ取り早く知りたい人には、冒頭の『パラダイム変換』論文以外はそれほどはっきりイメージがつかめないと思うので、竹田青嗣氏や西研氏の別の著書(『現象学入門』『現象学は思考の原理である』『哲学的思考』などを参照してから本書を読んだ方がいいかもしれない。

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