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ノンフィクション

労働者階級の反乱

――地べたから見た英国EU離脱

ブレイディみかこ 光文社新書

長い伝統を持ち、自分たちの階級に誇りをもって、ある時期は英国社会でメインストリームになっていた英国の労働者階級。その彼らが、ニュー・マイノリティ、つまり白人というマジョリティのなかの下層民に貶められてしまった。移民ではなく、自分たちだけが政治に無視されているという感覚が、Brexitを支持する相当数の労働者たちを産んだ。

労働者階級の右傾化とか移民に敵対する勢力とかの一般図式が、いかに当てはまらないか、本書を読むとなるほどとわかる。「歴代政権は、階級の問題を人種の問題にすり替えて、人々の目を格差の固定と拡大の問題から逸らすことに成功してきたのだ。これは経済的不平等の問題に取り組みたくない政治家たちによるシステマティックな戦略でもあった」(p.263)

ピケティの『二十一世紀の資本』で私たちが明確に気がついた通り、この経済格差、不平等、金融資本の支配が現代社会の問題の大きな部分をなしている。離脱だろうと残留だろうと、これが改善されない限り問題は問題としてとどまるだろう。伝統も人々の意識も英国とはかなり違う日本だが、グローバルの時代、問題の根はかなり共通しているのではないかと思う。

 

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