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文学・評論

素数たちの孤独

パオロ・ジョルダーノ 飯田亮介 訳

早川書房  2017.02.28

いやあ、これはやっぱり若いときに読むべき本だわ。触れれば血の滲むような、そんな感性を持っている頃に(まあ私は鈍感だからそんな時代もなかったような気がするが)。
年をとって分厚い皮膚をまとってしまった身には、残念ながらあまり響きません。

でもプロットはしっかりしてるし、翻訳で読む限りで表現力も抜群で、稀有の才能をもつ作家であることはたしか。しかもトリノ大学で素粒子物理学の博士号を得た少壮の物理学者だという。
ああ、トリノ大学と言えばプリーモ・レーヴィが学んだ大学。しかも同じストレーガ賞を得ている。レーヴィといい、カルロ・ロヴェッリといい、イタリアには理系ながら文学的才能を備えた人物が多いようだ。広く言えばウンベルト・エーコもそのカテゴリーに入るだろう。記号論理学は理系の頭の持ち主しかアクセスできないから。レオナルド・ダ・ヴィンチ以来のユニバーサル・マンの伝統だろうか。

写真で見たところルックスもなかなか。天は二物どころか三物も与えている。しかしもしこの小説に自伝的要素があるのなら、著者はなかなか辛い幼少年時代を送ったのかもしれない。手の届かぬブドウは酸っぱいと言い張る凡庸な人間のレビューでした。

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