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人文・思想

人新世の「資本論」

斎藤幸平 集英社新書 2020.09.22

資本主義の問題も、それと不可分な気候変動の問題も、ある程度克服できるのではないかという提案。それを夢物語とする冷笑的かつ後ろ向きな批判は禁じ手としよう。思想は
理念だけれど、理念が世の中を動かすこともない訳ではことは歴史が証明している、。

限界に来ている資本主義ではなくマルクス主義を、という主張も分かる。しかし、資本主義を排して、例えば労働者によるコモンの共同管理、自主管理によって新しい体制を立てることは、それが可能だとしても膨大な時間がかかるだろう。そうこうしているうちに、気候変動は元へ戻れない限界点に達してしまうのではないか。
そうだとしたら、資本主義の内部で、あらゆる対策を講じる方が結局は近道なのではないか。もちろん問題は気候変動だけではなく、様々の点で資本主義による社会の歪や綻びが明らかになっている。社会主義的な要素を取り入れなければ、既に資本主義は立ち行かなくなっている。

いずれにしても、マルクスが本当は何を主張していたかはともかく、社会主義・共産主義については、未だに答えられていない問題が多すぎる。自由と平等をどう調停するか?、共同管理が官僚支配に移行しないためには? 

バルセロナとか  ウォールストリートとか、世の中に問題があったときそれに抵抗する意見や運動が出てくる、それが全体の動きに加わって少しずつ変わってくる。でも一つの理念みたいなもので全体を変えるのは無理なのではないか。早く変わらないともう間に合わない、という著者の焦りは分かるけれど…

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