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ノンフィクション

ふくしま原発作業員日誌

イチエフの真実、9年間の記録

片山夏子 朝日新聞出版  2020.02.28

何かの評で読んでいまさらながら買うか借りるかしようと思っていたら、夫が既に持っていることが判明。早速借りて読んでみた。

廃炉作業の現場は大変だろうとは思っていたが、実に想像を絶していた。原発に関する議論はとりあえず措いて読んだが、そもそもそうした議論そのものが、こうした現場の実態を知らなければできないし、してはいけないのではないだろうか。

「作業員は二重の防護服に、厚手のかっぱ上下を二重に着て、ウェットスーツのようなゴムの全身スーツ、手袋は綿手の上にゴム手を三重~四重、長靴を履き、全面マスクを装着する。線量計も通常の二つに加えて、ベータ線も測れる計器を手の指、太もも、全面マスク内の計五つ着ける。タングステンベストを着るような高線量の作業の場合は、さらに身に着ける線量計が増えた…」
これは汚染水タンクの解体作業の例で特に重装備だが、他の場合もこれに比べてずっと楽というわけではない。事故ではなくても、おそらく原発に関わる作業員の仕事は通常の労働とは次元を異にする気がする。やはり原発は人間の顔をしていない!

原発解体作業員になった人びとの動機はさまざまだが、元々原発で働いて恩恵を受けていたのだから廃炉も自分たちの手でやらなければ、という責任感にかられてという人も多いようだ。「無責任の体系」を地でいっているような政府や上層部よりも、かれらのほうがよほどきちんとした人間らしい責任感をもっている。それなのに癌などの病気になっても、然るべき補償や治療を受けるには、高い壁がある。本当にため息がでるような状況だ。

これから何十年、もしかしたら百年単位でこの負の遺産と闘わなければならないのは、現地の人々や作業員だけでなく、日本人ひとりひとりなのだということだけは肝に銘じておこう。

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